Winning Mosquitoの精神(2)

勝ち続けるモスキートの直感と実行力

「完璧な基礎鳩モスキート号」

モスキート系の全貌を探るひとつの手段として、その基礎鳩モスキート号の存在価値と、そのモスキート号によって繰り広げられもたらされた数々のビッグタイトルの歴史に触れていくのがいちばんの近道であろう。

基礎鳩モスキート号が、ベルギーの名門ジョルジュ・ファブリー鳩舎から導入されたのは1967年のことであった。1958年生まれのこの鳩は、当時9才で花尻鳩舎に到着した。ファブリーといえば、今でこそ当代一流の系統として流布しているが、当時はほとんど導入されていない系統のひとつであった。

ファブリー鳩舎は、第一次大戦を境にして、ハンセン系を主流にファンデベルデ、ドミエ、ヒュースケン&ファンリール、グルネー、バスチン等の当時の強豪鳩舎より導入し、ファブリー系の確率に努めたが、そうした強豪鳩舎の仲間入りを果たすことになったのは1930年以降ということになる。

ハンセン系を主流としていたファブリー鳩舎は、ハベニス鳩舎より4羽の若鳩の導入により、新たな飛筋を形成していった。その代表鳩が、1948年のサンバンサンイヤリングレースで2216羽中総合優勝を果たしたヒロイン号であろう。そしてその直仔のアベル号がサンバンサンNで総合優勝をするに到っては、ファブリーの名がベルギー国内に響きわたらぬはずはなかった。

全盛期を迎えていた当時のファブリー鳩舎において、モスキート号も例外なく飛んだ。銘鳩の名に恥じない翔歴は残していた。そのモスキート号が、ある時期においては、ファブリー鳩舎の秘蔵鳩であった。もっとも、モスキート号よりもすぐれた翔歴を残しているムシュッテ号などがいたが、それらの鳩は売られたり、または死亡したりで、実際のところ、モスキート号がファブリー鳩舎の代表鳩として君臨していたのである。

「最高の中の最高の鳩が手に入った。モスキート号を見ているだけでも楽しい毎日が続いた」

と花尻氏が述懐しているように、完璧なレース鳩であった。

当時のファブリーが温存していただけに、それも当然のことであろうが、むしろそうした経緯は何か因縁めいていて、将来のモスキート系を暗示しているようであった。

モスキート号自身、ベルギー随一の血統に裏打ちされたチャンピオン鳩であり、安定した強さは類稀のものであった。その固有の特長は、優入賞する体の良さ=ボディ・バランス、身持ちの良さ=ボディ・コントロール、利口で頭脳的な良さ=ブレイン、常に最前線を飛ぶ勇敢さ=ブレイヴ…という分析も当然頷ける。

この鳩自身、頭の大きさはペンチ・ノーブルタイプで、鼻瘤も大きく、脚はやや短めで、羽は一枚一枚の幅が広く、また羽軸も太く、眼の色は赤に金の巻いたようなスピードバードそのものであった。モスキート号導入と同時に、クィンビーとクレオが基礎交配鳩として迎え入れられたが、基礎交配鳩としてもう一羽忘れてはならないのが、勢山系の銘鳩253号の親仔配合の娘すみれであろう。

まず、モスキート号とクィンビーを交配して第一回目の作出が試みられた。

わりあい体の大きく出一羽の仔(42-7983BC♂)がその年にテストされ、100K2位、450K2位という成績を残し、当才でストックされた。このモスキート号の一番仔はジョニ黒と名付けられた。また、クレオとすみれとの交配も行われたが、作出鳩すべてはレースに使わず種鳩として残された。

ジョニ黒と、すみれ直仔の42-135242B♀との交配で作出された43-10034B♂が、オリジナルモスキート系の幕を開けた。69年の成鳩選手権500K関西総合優勝を成し遂げたのである。

この交配はいわゆる二重近親であったが、花尻氏はこれら交配鳩の非凡な能力を見越して、近親の弊害は気にかけなかった。いいかえれば、基礎鳩モスキートの卓越した性能に全幅の信頼をおいていたのであった。

そのジョニ黒だが、モスキート号の一番仔として並はずれた種鳩であることに異論をはさむ余地はない。直仔、孫等の直系がほとんどのレースで優勝している事実からしてもそうである。

そしてさらに驚くことは、詳細は後に譲るが、1983年秋の市振アベレージ300K近畿総合優勝を果たしたモスキートロマンの父親がジョニ黒であった事実である。その時ジョニ黒16才であった。

モスキート号については、モスキートブック・パートⅡもご覧ください。

1981年度近畿連盟最優秀鳩舎賞成績

〈春季〉

  • 200K 1159羽中4位,5位,8位,14位,16位,20位,他5%内11羽入賞
    ※97羽参加中82羽記録
  • 300K 1043羽中1位,7位,8位,11位,12位,14位,15位,16位,20位,29位,50位
    ※82羽参加中68羽記録
  • 200K 753羽中8位,11位,23位,26位,27位,34位他 ※91羽参加中76羽記録
  • 地区R400K 4398羽中3位,71位,81位,82位,90位,他5%内7羽入賞
    ※70羽参加中56羽記録
  • シルバー500K 2806羽中3位,7位,14位,34位,36位,59位,他5%内5羽入賞
    ※56羽参加中41羽記録
  • 地区N600K 3810羽中5位,6位,11位,21位,23位,24位,25位,他10%内11羽入賞
    ※43羽参加中32羽記録
  • ロイヤル600k 1347羽中5位,6位,11位,21位,23位,24位,25位, 他10%内11羽入賞
    ※30羽参加中30羽記録
  • GR1000K 1195羽中4位 ※18参加中1羽記録
  • GN1200K 200羽中2位,17位,84位
    ※3羽参加中3羽記録
  • ダービー700K 75位,91位他
  • GP1100K 200羽中1位 ※2羽参加中1羽記録

〈秋季〉

  • 楓賞200K 379羽中7位,8位,9位,11位,12位,13位
    ※120羽参加中113羽記録
  • 200K 370羽中4位,11位,14位,18位,20位,21位他
    ※120羽参加中107羽記録
  • アベレージ300K 3588羽中12位,15位,57位,71位,116位,119位,123
    ※120羽参加中75羽記録
  • アベレージ500K 1808羽中3位,14位,15位,17位,26位,42位,57位,62位,63位

〈その他〉

  • 近畿地区連盟最優秀鳩舎賞
  • 近畿地区連盟ゼネラルチャンピオン
  • 近畿イヤリングエースピジョン
  • 江別ロイヤルグランプリ近畿総合優勝
  • アカデミー賞
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