Winning Mosquitoの精神(7)

リアル・モスキートスピリット

81年は、花尻モスキート系が日本全国から熱い視線を注がれた年であった。モスキートスピリットが爆発した。その主役の座がモスキートRGであった。

まず、春の長万部GR1000K優勝、近畿総合4位に続き、江別RG1100K参加、近畿総合優勝を成し遂げたのである。1000K以上の長距離に連続して参加出来るのはモスキート系特有の何ものでもないが、それが総合優勝を飾ってしまうパワーとスピードは、驚嘆という言葉以外見当たらない。

完成されたモスキート系の醍醐味を十分満喫させてくれたチャンピオンバードである。血統が、モスキートエース×オスカークイン直仔と、ド・シャトロ―×エブリンチエ直仔から交配作出されたのも興味を引く。

ド・シャトロ―は、74年にヨーロッパ歴訪の折、ベルギーの名門デズメット&マタイス鳩舎から導入した異血鳩である。卓越したスピードとは、この鳩のための代名詞のようであり、シャトロ―IP総合優勝、同P総合優勝と、2大レースを制覇し、また同Pでは同着の総合2位というまぎれもないチャンピオンであった。この鳩を導入した花尻氏に先見の明があったといっては話は簡単だが、その時の感覚で異血鳩をセレクトする能力は、血統を抜きにしては語れそうもない。

つまり、このド・シャトロ―はデズメット&マタイスの本流のクラーレン、それにデフレンド鳩舎の銘鳩ズワルテバンドの血が入っている銘血中の銘血ということと、交配鳩のエブリンチエが全妹ということとが深い意味をもっていた。すなわちこれは、母親がデズメット&マタイスの優秀な因子が近親交配によって固定化されているという事実である。

伝統的な強さとはよくいったもので、類稀なスピードは、モスキートRGにソックリと受け継がれた。モスキート系の破壊力を最もリアルに映し出したのがこの鳩といえるだろう。

この年は、冒頭の表に示したように破竹の勢いであった。文句なしのトップレースマンの貫禄であった。近畿イヤリングエースピジョン1位、3年連続近畿ゼネラルチャンピオン、近畿地区最優秀鳩舎、それに本誌アカデミー賞と、ビッグタイトルを欲しいがままにした。しかしなぜ、これほどにモスキート系は強いのだろうか。当時の花尻氏は語っている。

「第一は、勝ち残れる系統ということ。それは、チャンピオンを出しうる系統を見抜くこと。」

これは、まさに基礎鳩モスキート号であり、異血鳩であるド・ソートレン、ド・シャトロ―であろう。そして、レースのテーマはいかに勝ち続けることをことに強調する。

「レースをする以上、ブッチ切れる要素、雨天をこなせる要素まで含めたすべての要素が必要。しかし、ベストポイントはスピード。」

レース鳩のあらゆる要素を盛り込んだ血統の集大成というのがモスキート系なのであろう。そこには、レースを真正面から見据えるレースマンの真実の目があった。

しかし、そうしたチャンピオンづくりにあっても「レースは楽しむもの」という一貫した基本姿勢に変わりはない。レースを楽しみつつ、夢を拡大していくといった、いわば最もナチュラルな考え方なのである。ただし、その夢を叶えてくれるのは血統であり、血統をセレクトするのは理解力、実行力によってである。この夢が総合優勝という形を積み重ねた時、初めて「勝ち続けること」の出発点となるのであろう。

モスキート号については、モスキートブック・パートⅡもご覧ください。

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