前代未聞のイヤリング2度総合優勝
兄のモスキートエース、姉のモスキート楓とともに忘れることの出来ないのが77年に前代未聞のイヤリングで2度の総合優勝を飾ったロイヤルモスキートであろう。
春の地区R近畿総合優勝、秋の滑川300K 近畿総合優勝と、ケタ違いのスピードと強さを見せつけた。
血統的にも洋の東西での違いの筋であり、この時期、エクセレントモスキートとともに、モスキート系を代表する卓越したスピードバードの誕生であった。長万部チャンピオン75の1000K制覇で、花尻氏の直感力はますます鋭敏なものとなった。
78年春の長万部GR1000K近畿総合優勝したモスキートジャガールは延飛翔距離12,700Kが物語るように、連戦連闘型のまさしく花尻鳩舎のポイントゲッタ―であり、1000K5回内4回入賞して近畿エースピジョン3回入賞を果たしたタイトルホルダーである。安定性とスピードにおいては上位入賞が確約出来る鳩で、兄のブルーチェッカー、妹のシスタージャガールの全兄妹による総合優勝はモスキート系特有のもの。血統のベースがしっかりとしている証でもある。
78年は兄のモスキートジャガールが雨の長万部GR1000K近畿総合優勝、妹のシスタージャガールが、これもやはり雨の市振アベレージ300K近畿総合優勝、そしてその300K・500Kツーアベレージ近畿総合優勝を果たしたのがトップスターであった。特にツーアベレージの序列においては、1位から4位までを独占した。
さらに笹川賞のモスキートピューマである。総合優勝一発だけではない、花尻鳩舎の底知れない安定した強さが発揮された年で、全日本優秀鳩舎を獲得した。
翌79年は、モスキート343がモスキートジャガールに続いて、長万部GR1000Kを制覇。78年には1シーズン1000K連続入賞をしてもいる連戦型のスピードレーサー。直仔のダービーヒーローは、その年の秋、日本ダービーで全国総合優勝を果たしている。
同じ年に、親仔2羽が総合優勝した類稀な記録である。モスキート343がその時、種鳩兼レーサーだったのも驚きだ。つまり、種ヒーローを作出してから長万部へ参加し総合優勝、そしてダービーヒーローが、親を追うように半年後には日本一になったという図式である。
「この343は何かやってくれると思っていた」とは、78年に1000K連続入賞後の花尻氏のことだが、これはモスキートを育てるという包容力の表れであろう。実際、マーク鳩の予告優勝であり、絵に描いたような完璧な勝利であった。この年、マーク鳩による近畿ゼネラルチャンピオンを獲得、正真正銘の直感力を抜歴した。
血統は、ド・ソートレンとモスキート号親仔配合の直仔との交配から作出された、いわば花尻モスキート系の異血交配の最高のものである。これはまた、ダービーヒーローの総合優勝で、親仔3代連続総合優勝の銘血を形づくった。恐ろしいのは血統というのが、この一連のレースが象徴的に語っていた。
モスキートロイヤル、モスキートエース、モスキート楓に続くモスキート系4兄妹の一羽、ダブルタイトルは、80年代の幕開けにふさわしいビッグタイトルを奪取した。80年地区R総合114位、地区N総合32位、長万部GR1000K総合6位、長万部GP総合8位という抜群の成績を1シーズンで上げ、その年近畿エースピジョン1位、総理大臣賞近畿総合優勝というまさにダブルタイトルを腕ぎ取った。
安定したパワーと、切れ味の鋭さはピカ一で、2つのタイトルは2位以下を大きく引き離しての獲得だった。そして、連続のゼネラルチャンピオンも手中に収めた。
ファングレムベルゲン教授作出のバルセロナⅡ直仔と、スパーク×すみれの交配から作出されたダブルタイトルなど4兄妹だが、この筋からはほかに十数羽の総合優勝鳩が輩出されている。例えば、金沢正守鳩舎の80年東日本GN1100K当日1羽帰り総合優勝にも、この筋の血が流れている。
「東西のチャンピオンの直仔同士の配合で、チャンピオンの再現を試みる」とかつて花尻氏は語っていたが、その創造力は無類の安定した強さと血統を伴って実現した。
しかもぽっと出の総合優勝とは違い、一連のタイトルホルダーの出現ということが、花尻モスキート系の最大の特徴であり、真価であった。
モスキート号については、モスキートブック・パートⅡもご覧ください。