Winning Mosquitoの精神(5)

怪物ド・ソートレン異血導入

無類の安定性と揺るぎない強さ。これがモスキート系の本流であろう。

花尻モスキート系には、必ず基礎鳩モスキート号の血が流れている。それはダイレクトでも代を落としてからでもチャンピオンは生まれている。そして、そのチャンピオンから戻し配合によって、モスキート号の近親血統を固定化させているのが、いわばモスキート系のひとつの特長である。

しかし、異血交配によるチャンピオン作出も、またひとつの大きな特長であった。今日のモスキート系があるのも、モスキート号血統の固定化はもちろんだが、それら異血鳩の存在も否定できない。

異血鳩導入で、ある程度の強化が出来れば当分はその筋で使っていくのが普通だが、花尻鳩舎の場合は、異血鳩に対しても考え方がグローバルだ。いかに勝ち続けるかをテーマとしている花尻鳩舎には妥協は許されない。それが世間をアッと言わせる大チャンピオンの導入に結びついてくるのである。

たえず理想を現実のものとする飽くなき追求心は、その時その時の感覚でセレクトを重ね、総合優勝を呼び込もうとしていた。

74年の夏、花尻氏はヨーロッパへと足を運んだ。世界の大チャンピオン導入であった。まず、G.&M.ファンネー鳩舎のド・ソートレン。花尻氏をして「バケモノ」と言わしめたこの鳩は、72年、73年にラ・スーテレーヌNで連続総合優勝(他優勝9回)をやってのけた、まさに怪物そのものであった。雄の野性味を感じさせる強烈な個性、堂々たる風貌は、花尻氏でなくとも垂涎の的であった。

カトリス系の血が濃いこのド・ソートレンを導入し、花尻氏の創造力の夢もまたふくらんだ。このド・ソートレンによって、その後数々の銘鳩が誕生することになる。

ド・ソートレンをはじめ、一連の異血チャンピオンは、総合優勝という非凡な能力を有しているばかりでなく、異血種鳩としても非凡であった。これまでのモスキート号の一族が、近親交配によってその性能が固定化されていったように、異血として入れた種鳩も、ほぼ近親交配によって性能が固定化されたチャンピオンばかりなのである。

ド・ソートレンが非凡な能力を発揮する機会が早くも来た。ペナントとの交配の筋でペナントⅡ直仔のモスキートピューマがそれである。67年、78年の地区R連続総合2位、77年の近畿合同300K 総合2位という超スピードバードで、地区Rでは予告優勝のマーク鳩1位。78年には笹川賞を獲得した。

77年は、青森の長谷川武鳩舎がモスキート号のかなり強い近親から作出したモスキートグランプリが、青森・岩手合同GP1000Kで総合優勝。長谷川氏の厚意により逆導入してからも非凡な能力を発揮、典型的なスピードタイプを一連に輩出している。例えば、83年地区N総合優勝のキングメーカーがそうである。

モスキート号については、モスキートブック・パートⅡもご覧ください。

前の記事
次の記事

You Might Also Like