花尻モスキート系が、その基礎鳩モスキート号をベルギーの名門ファブリー鳩舎より導入してから18年の歳月が流れた。それから今日までモスキート系は我々に幾多のドラマを演じて見せてくれた。
モスキート号直仔のスパークに始まり、ペガサス、ペナントの親仔3代連続総合優勝は、今やモスキート系の語り草となっている。
また、1シーズン総合優勝2回のエクセレントモスキート、イヤリング総合優勝2回のロイヤルモスキート、さらに異血鳩ド・ソートレンからモスキート343、ダービーヒーローによって再び親仔3代連続優勝の銘血が誕生した。
見るものの目を驚嘆と脅威の世界に引きずり込んだモスキート系は、不世出の超銘鳩グレードモスキートを生み、パーフェクトソートレンを生み、……そしてモスキート夢幻、モスキートロマン、ゴールデンベル……と、限りない男のダンディズムを反映していった。
しかし、花尻モスキート系の野望はさらに貪欲であった。日本の空をモスキート一族が自由自在に翔けめぐるまで、さらにその情熱は止むことを知らないであろう。
「レースを楽しめ、鳩自体がタフで、連戦が効き、結果的には勝つ」
これがモスキート系のベースである。
モスキート系の強さの秘密は、この4つの条件が相関関係にあり、互いに保り続けながら持続してきた結果にある。この条件のひとつでも欠けていたなら、今日の常勝モスキート系は存在しなかったかもしれない。
「無類の安定性」「揺るぎない力」「卓越したスピード性」……
モスキート系を形容する言葉は数限りなくあるが、たしかにその言葉は真実であり、他に類を見ない系統であるが、モスキート系の本質に触れる場合、やはり連綿としたチャンピオンをつくりうる“創造力”を抜きにしては到底語れない。
その“創造力”とはいったい何なのか。
レース鳩に関するあらゆる要素が網羅された力には違いないが、今はただ、基礎鳩モスキート号によってもたられた天の授かり物と答えておこう。
むしろ、基礎的にレースを楽しむことを出発点としているからこそ、Winning Mosquitoの精神は我々を魅了し、心に染みてくれるのである。